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眼内レンズ(IOL)情報

白内障手術で挿入する眼内レンズには、見え方の特性や対応距離、費用などに違いがあります。

単焦点・多焦点・トーリックの違い、保険適用の範囲、生活シーン別の選び方まで、レンズ選びに必要な情報をまとめました。

レンズの最終決定は、必ず主治医と相談のうえで行ってください。

眼内レンズの違いを早見表で確認

まずは代表的な3タイプの違いを比較表で確認しましょう。費用や保険適用については後の「費用と保険」セクションで詳しく解説します。

項目単焦点多焦点トーリック(乱視用)
保険適用適用(健康保険)選定療養(一部費用が自費)単焦点:適用 / 多焦点:選定療養
ピントの合う距離1ヶ所のみ遠・中・近の複数距離乱視矯正+焦点設計に応じる
メガネの必要性ほぼ必要減らせる(不要な人も)乱視のメガネは不要になりやすい
夜間のハロー・グレア起こりにくい起こりうる(多くは慣れる)焦点設計による
費用感(片眼)保険3割で約45,000〜60,000円選定療養で約15万〜45万円(追加分)単焦点+追加3〜5万円程度

※費用は目安であり、施設や使用するレンズによって変動します。

メーカー別・全レンズの詳細を比較したい方へ

国内承認・選定療養・自由診療まで、主要メーカーのIOLを横断的にソート/フィルタできる詳細データベースをご用意しています。

眼内レンズ一覧・比較表へ

単焦点眼内レンズ

1つの距離(遠方・中間・近方のいずれか)にピントを合わせる、最も基本的なタイプの眼内レンズです。健康保険が適用されるため、自己負担額を抑えながら安定した見え方が得られます。

遠方に合わせる

車の運転や旅行など、遠方を見たい方に。手元の作業(読書・スマホ)には老眼鏡が必要になります。

中間に合わせる

パソコン作業や料理など、50cm〜1m程度を見やすくしたい方に。遠方・近方ともに軽度のメガネが必要です。

近方に合わせる

読書や手芸など、手元の作業を中心にする方に。遠方を見るには遠用メガネが必要になります。

メリット

  • 健康保険適用で費用負担が少ない
  • 夜間の光のにじみが少なくクリアな見え方
  • 長年の実績があり安定した結果が期待できる
  • 術後の慣れに必要な期間が短い

デメリット

  • 合わせた距離以外はメガネが必要
  • 遠近両用メガネに慣れる必要がある場合がある
  • 乱視がある場合は別途矯正が必要

多焦点眼内レンズ

遠方・中間・近方など複数の距離にピントが合うレンズで、メガネへの依存度を減らせます。光を分散させる構造のため、夜間のにじみやコントラスト感度低下といった特性も理解したうえで選択することが大切です。

2焦点(遠+近)

遠方と近方にピントが合うタイプ。読書と運転を両立したい方向け。中間距離はやや見えにくくなります。

3焦点(遠+中+近)

遠・中・近のすべてに対応。パソコン作業・料理・運転・読書など幅広い場面で使えます。

EDOF(焦点深度拡張型)

遠方から中間距離まで連続的にピントが合うタイプ。ハロー・グレアが少なめで、夜間運転をする方にも検討されます。

メリット

  • メガネに頼らない生活がしやすい
  • アクティブな趣味(旅行・スポーツ)と相性が良い
  • パソコンとスマホ・読書を両立しやすい
  • 選択肢が広く、ライフスタイルに合わせて選べる

デメリット(事前に理解したい点)

  • ハロー・グレア:夜間に光源の周りに輪が見えたり、まぶしく感じることがあります。
  • コントラスト感度の低下:薄暗い場所での見え方が単焦点より弱くなることがあります。
  • 慣れに時間がかかる:脳が新しい見え方に適応するのに数ヶ月かかる場合があります。
  • 細かな作業ではメガネが必要なことも:手元の極小文字や暗所では補助メガネが有効です。

こんな方には慎重な検討を

夜間運転を頻繁に行う方、すでに緑内障や黄斑疾患をお持ちの方、極端なコントラスト感度を要する職業の方(パイロットなど)は、単焦点や特定のEDOFタイプが向いている場合があります。主治医と十分に相談しましょう。

トーリック眼内レンズ(乱視矯正用)

強い角膜乱視がある方に対して、レンズ自体に乱視矯正機能をもたせたもの。単焦点・多焦点それぞれにトーリックタイプがあり、術前の乱視を眼内レンズで矯正することで、術後の見え方の質が高まります。

向いている方

  • 角膜乱視が強い(1.5D以上が目安)
  • 術後にメガネ依存を減らしたい
  • 多焦点レンズで満足度を高めたい

注意点

  • レンズの軸合わせが重要で、施設の設備(角膜形状解析装置など)が問われます
  • 術後にレンズが回転すると効果が落ちる可能性があります
  • 標準の単焦点に追加3〜5万円程度の費用差が目安です

費用と保険適用

眼内レンズの種類により、保険適用の範囲と自己負担額が大きく変わります。代表的な料金パターンを整理しました(片眼あたり、施設により幅があります)。

レンズ種類適用区分3割負担の目安1割負担の目安
単焦点健康保険適用約45,000〜60,000円約15,000〜20,000円
単焦点トーリック健康保険適用約60,000〜90,000円約20,000〜30,000円
多焦点(2焦点)選定療養手術費+約150,000〜250,000円手術費+約150,000〜250,000円
多焦点(3焦点・EDOF)選定療養手術費+約250,000〜450,000円手術費+約250,000〜450,000円
国内未承認レンズ(自由診療)全額自費片眼60万〜100万円超片眼60万〜100万円超

※選定療養では、手術料・入院料は健康保険が適用され、レンズの差額分のみが自費となります。

高額療養費制度

1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻されます。70歳以上で住民税課税世帯は月57,600円が目安です。詳細はご加入の保険者にお問い合わせください。

民間医療保険・先進医療特約

「先進医療特約」付きの医療保険に加入している場合、過去の対象期間の治療費が給付対象となるケースがあります。契約時期や約款を確認してください。

生活シーン別 レンズ選びのヒント

どの距離をよく見るかによって、適したレンズの傾向が変わります。普段の生活で時間を費やすシーンを基準に選ぶと、術後の満足度が高まりやすいです。

距離の目安よくあるシーン向いているレンズ傾向
30cm未満スマートフォン・SNS近用に強い単焦点 / 3焦点・EDOF
30〜50cm新聞・読書・手芸近用単焦点 / 3焦点
50〜70cmパソコン・事務作業中間に強い単焦点 / 3焦点・EDOF
〜50cm食事・台所中近〜近用単焦点 / 多焦点
70cm〜1m料理・ピアノ・楽器中間単焦点 / 3焦点・EDOF
〜1m会話・団らん中間単焦点 / 多焦点
1〜2mテレビ・観劇遠方単焦点 / 多焦点全般
1〜3m散歩・外出遠方単焦点 / 多焦点全般
〜5mスポーツ(テニス・ゴルフなど)遠方単焦点 / EDOF
5m以上車の運転・旅行遠方単焦点 / EDOF(夜間に強いもの)

職業別の特別な事情

  • パイロット・夜間長距離運転手:コントラスト感度が重要なため、単焦点遠方や夜間に強いEDOFが優先候補。
  • タクシー・トラックドライバー:免許更新基準(両眼0.7、片眼0.3)を満たせるよう遠方視力を最優先。
  • 運転免許の更新が迫っている方:所定の診断書を提出することで、更新期限が半年延長される制度があります。

国内承認・未承認レンズについて

眼内レンズには、日本国内で承認されているもの(PMDA承認)と、海外で使用実績はあるが国内では未承認のものがあります。一般的な選定療養や保険診療の対象になるのは「国内承認レンズ」です。

国内承認レンズ

  • PMDA(医薬品医療機器総合機構)による承認済み
  • 選定療養・保険診療の対象になる(条件あり)
  • 不具合発生時に国内ルートで対応が可能
  • 多くの施設で安定して取り扱いがある

国内未承認レンズ

  • PMDA承認なし(医師個人輸入扱い)
  • 全額自由診療(片眼60万〜100万円超が目安)
  • 選定療養・保険併用は不可
  • 万一の不具合時の対応窓口が限定される場合がある

レンズの最新情報

国内承認レンズと選定療養対象機種は、随時追加・更新されています。具体的なレンズ名や最新の対象機種については、主治医や厚生労働省の公開情報をご確認ください。